東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)154号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無)
二 原告は、その指摘する点において本件審決は判断を誤つた違法があると主張するけれども、その採用できないことは以下説明するとおりである。
(本願と第二引例との技術分野の相違について)
(一) 本件審決が第二引例を引用した趣旨は、本願実用新案の吸収冷凍装置中のボイラー装置に関し、一個または数個の流体循環系部材と二個の伝熱部材とを熱伝導的に結合しておくようなことは、すでに公知の技術に属することを認定判示するためであることは、前記争いのない本件審決の理由の要点に照らし明らかであり、この審決の判断は、本願実用新案および第二引例の各明細書の記載を対比することにより、正当ということができる。したがつて、本願におけるボイラー装置と第二引例とは、流体加熱用ボイラー装置に関する点で技術分野を共通にし、審決指摘の循環系部材と伝熱部材との結合の態様の点で共通の枝術思想をもつものであるから、第二引例をもつて右技術思想が公知であることの認定の資料とした本件審決の判断に、原告主張のような誤りはない。
(本願と両引例との差異について)
(二) 原告は、本願実用新案は「二個の熱源が、交互にのみ作動し、かつ、互いに熱的に分離される」点に構成上の特徴があり、その点で両引例と相違すると主張するが、前記争いのない本願実用新案の要旨中には、右のような構成を採用する思想は含まれておらず、また、本願の明細書の記載および添附図面によつても、右のような点が本願考案の要件とされていると認めることはできない。すなわち、本願考案の要旨中「二個の交互作動熱源のどれか一つの熱源から装置の正常操作に必要な熱流を……伝達する」とある部分と、前掲本願明細書の「考案の詳細な説明」の項中、(イ)「管16、17とポンプ15との熱伝導的連結は、二つの熱源の一方からポンプ15に供給された熱が、作動していない第二の熱源の熱伝達部材によつてポンプ15から奪われるのを防止するため特殊な方法で配置されている……」旨の説明部分および(ロ)「……一のスイッチがすでに入つていれば別の熱源のスイッチを入れることが不可能になるロック装置を配置するか、または一の熱源がスイッチを入れられているときは、別の熱源を自動的に遮断することが提案されている……」旨の説明部分とを対比し、かつ、明細書の全文および添附図面の記載を検討してみても、本願考案の要旨中の前記の部分は、単に、「二個の熱源が切替えにより交互に作動しうるものであり、そのどれか一個の熱源のみで装置の正常操作に必要な熱流を伝達しうる」ものであることを示すにとどまり、これを原告主張のような限定的意味をもつものと解することはとうてい不可能であつて、「考案の詳細な説明」の項中の右(イ)(ロ)の部分は、本願考案の実施の態様についての提案にすぎないと解するのが相当である。そして、考案の要旨中の前記の部分を原告主張のような限定された意味に解しえない以上、そのような要旨すなわち「二個の交互作動熱源のどれか一つの熱源から装置の正常操作に必要な熱流を……伝達する」という構成は、第二引例においても具備されていることは明らかである。
してみれば、本願実用新案が「二個の熱源は交互にのみ作動し、互いに熱分離される」ものであるとして、本願と両引例との差異を指摘し、本件審決はこの差異を看過した点に判断の誤りがあるという原告の主張は、理由がないというほかはない。
(むすび)
三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとして本件審決の取消しを求める原告の請求は失当であるから棄却する。
(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)